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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

アングスト/不安

“衝動”や“熱”は、殺人の動機として認められるだろうか。 1980年にオーストリアで実際に起きた一家惨殺事件の実録犯罪ドラマである本作。1983年に完成し、本国オーストリアで公開されたもののわずか1週間で上映打ち切りになり、ヨーロッパ全土で上映禁止、アメリカではXXX指定という問題作だが、37年の歳月を経て日本で公開となる。描かれるのは、殺人未遂で長く刑務所にいたKが釈放をひと月前にして、許された外出期間3日間のうちに起こす事件。 本作が製作された時代を感じる服装や演出はもちろんだが、当時の作品としての異質さは十分に感じる。殺人者Kはまるで異星人のように目に映るが、論理が破綻した異常性を「快楽殺人者はきっとこうなんだろう」と観客に信じさせる説得力がある。これは、ミニマリズムに特化した演出あってこそかもしれない。 淡々としたKのナレーションは、本作を“映画”でなく“殺人者の記録”であると印象づけ、観客を不安に陥れる。どちらが先かKの不安もまた、それに呼応するかのようにスクリーンを通して伝播してゆく。

20/7/3(金)

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