演劇カンパニー「チェルフィッチュ」の舞台創作の過程を追ったドキュメンタリーだ。劇団主宰者の岡田利規が2005年に第49回岸田國士戯曲賞を受賞した『三月の５日間』。その再演に向けて、演出家の岡田がオーディションで選ばれた若い俳優たちを指導する様子が本読みからパリ公演までの2年間にわたって記録される。俳優が演じる際の想像作業を重視する岡田の演出によって、シンプルな舞台空間で俳優がパフォーマンスを作り上げていく姿が描かれる。映像的には同じ俳優が何度も同じセリフを繰り返す姿を映し出していて、本作もシンプルなドキュメンタリーといえるが、興味深いのは岡田の指導で次第にセリフにリアリティが生み出されていくことである。演劇ファンには堪えられない世界だろう。

21/5/16(日)