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水先案内人のおすすめ

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ダメな人が出てくる情けない話やバカげた映画を中心におススメ

村山 章

映画ライター

眠る虫

若手女性監督によるオムニバス『21世紀の女の子たち』にも参加していた金子由里奈監督が、ポレポレ東中野と共同で自主配給する新作映画が公開中だ。本作が初長編ということだが、上映時間は1時間2分。小品と呼ぶべき尺に奇妙だが豊かな時間が詰まっている。 どんな映画が説明するのは少々難しい。バンドマンで町中の音を録音して集めることに没頭する主人公が、バスで乗り合わせたおばあさんの鼻歌を聞いて、なんとか録音しようとするうちに、現世とあの世の境目に迷い込んでしまう。いや、迷い込んではいないのかも知しれない。一種の幽霊譚だが、オカルトでもホラーでもファンタジーでもなく、幽霊はいるし、誰かが驚いたりもしない。特に説明もなくフラットに進んでいくこと自体がホラーだという見方もできるが、ささいな日常の瞬間を汲み取る演出のおかげで、こちらもフラットに受け取るしかないという覚悟がいつの間にかできてしまう。 金子由里奈監督の父親は、平成ガメラ3部作などで知られる金子修介監督だが、独自の感性に満ちているので、親子監督の繋がりを見出したいという気にはならない。自分たちも知っている感覚をほんの少し広げてくれるような、ヘンテコで清々しいオリジナルな映画だと思う。

20/9/10(木)

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