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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

夏時間

季節を描いた映画で思い出すのは仏監督エリック・ロメールの一連の作品だ。天候や景色、人々の服装などを通じて、その季節の空気感がスクリーンから伝わってきた。夏の海が映し出されると、劇場の客席にいながら適度に湿気を含んだ心地よい浜風に包まれているような感覚に陥ったものだ。 韓国映画『夏時間』も、そんな繊細な空気に満ちている。観ている間、夏のやわらかな風を感じた。登場人物たちと同じ空気を吸っているような気になった。 夏休みのある日、10代の少女オクジュは父と弟とともに祖父の家に引っ越す。父が事業に失敗したのが理由だ。母は別の場所で暮らしている。しばらくして離婚寸前の叔母がやってきた。一つ屋根の下で3世代の同居生活が始まって…。 アカデミー賞作品『パラサイト 半地下の家族』は舞台となった邸宅が印象的だったが、本作も祖父の2階建ての大きな家が魅力的だ。風がよく通る2階、広い庭には菜園がある。どこか懐かしい雰囲気が家屋を覆っている。そこで家族の様々な心情が交錯する。物語の筋を丁寧に追わなくても、家屋と家族の描写を見つめているだけで心が揺さぶられる。 女性監督ユン・ダンビのデビュー作。次作も観なければならない。

21/2/24(水)

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