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水先案内人のおすすめ

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ホラー、ミステリー、トンデモ映画が大好物

春錵 かつら

映画ライタ―

護られなかった者たちへ

護られなかった者たち、それは護られるべきだった者たちだ。 本作は中山七里の同名小説を原作とした連続殺人を巡るミステリーだが、映画はミステリーよりも社会への問題提起の方が色濃い。物語は未曽有の東日本大震災を原因とする貧困と生活保護の実態を描くが、これは現在のコロナ禍での貧困と生活保護の実態と何ら変わりない。 政治家は言う。「困った人を助ける制度が国にはある」「最終的には生活保護がある」と。『生活保護制度』は、全ての国民が困った時に受けるべき権利だ。しかし本当に必要な人に必要な額が届いているとは言い難く、不正受給を防ぐという名目で受給のハードルは高く設定されている。そして受給要件を満たしていても却下させられることもしばしばだ。さらに多くの人は知らないが、申請が通っても支給される額は最低限の生活費、とは言いづらい額なのが現状だ。 本作で描かれる人々はすべからく“平凡で普通の”人々だ。しかしかつて謳われたような「平凡なしあわせ」は今や平凡ではないし、人はあっという間に社会からこぼれ落ちる。不意の“アクシデント”で、“特別な人”となってしまう。それは「被災者」であったり「被害者」であったり「加害者」であったり、あるいは「不幸な亡くなり方をした故人の家族」であったりさまざまだ。彼らはその“特別”を隠すようにして生きなければならない。 だれもが一瞬で人生が変わる。本作を観た人の悲しみや怒り、その感情を湧き立てる想像力が、護られなかった誰かを救うひとひらの希望になれば…という、まるで“祈り”のような作品だ。

21/9/27(月)

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