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水先案内人のおすすめ

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テレビプロデューサー テレビは見ずに演劇、映画、コンサートばかり足を運んでいる

波多野 健

1954年生まれ プロデューサー(イースト・エンタテインメント)

ベル・エポックでもう一度

これはラブ・コメディと呼んでいいのだろうか。とにかく、10回以上は大笑いした。しかし、全体の作りとしてはふたりの老夫婦の愛の物語で、その味わいも、実に深い。ベル・エポックというから1900年あたりの設定かと思ったら現代が舞台で、冒頭から次々と驚かされる、かなり凝った構造になっている。イラストレーターの夫はデジタル化になって仕事がなくなり、さらには妻に愛想を尽かされて家を追い出される。そんな彼は息子からプレゼントされた「過去の自分が生きたい時代に行ける旅」に出る。といっても、撮影スタジオに当時を再現したセットが用意され、役者たちが当時の様式で対応してくれるというもの。この仕掛けがなかなかよくできていて、舞台裏からインカムで監督が指示を出したりと、あたかも『スパイ大作戦』を観ているような気分になり楽しい。夫役のダニエル・オートゥイユもうまいが、妻役のファニー・アルダンが長年つれそった夫との心の揺れ動きを見事に演じている。全体の構成や、セリフがとてもよくできていて、こういうのを「エスプリ」というんだろうなと感心した。フランスならではの映画。アメリカでも日本でもこういう映画は作れないだろうな。ものすごく、お薦めです。

21/5/26(水)

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