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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

恐怖に襲われた街〈HDリマスター版〉

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」の1本として上映。 ジャン=ポール・ベルモンドは最初に出会った作品、あるいは世代によってその印象が大きく変わる映画俳優である。ヌーヴェル・ヴァーグ直撃世代なら、ゴダールの『勝手にしやがれ』(60)とメルヴィルの『いぬ』(62)という伝説の栄光を背負った神話的なスターとして記憶されているだろう。 私のようなアメリカン・ニューシネマ世代だと、同じヌーヴェル・ヴァーグでもトリュフォーの『暗くなるまでこの恋を』(69)が最初の出会いだが、1970年当時、ベルモンドといえば、やはりアクション・スターのイメージが強かった。今回の「傑作選」の8本もベルモンドの肉体を駆使した無償のアクションが冴えわたる娯楽作品ばかりがピックアップされているが、なかでも久々に再見した『恐怖に襲われた街』(75)が愉しめた。 冒頭、レア・マッサリが呆気なく殺害されてしまう贅沢なシーンに始まり、さらには犯人を追うベルモンドが、吹き替えなしで、高層アパートの屋根づたいを軽やかに徘徊したり、疾走するパリの地下鉄の屋根を匍匐前進するシーンにはただ驚嘆するばかりだ。 一方で、ベルモンドは『ムッシュとマドモアゼル』(77)のようなバカバカしい一人二役を嬉々としてやってのけるユーモアが身上でもある。次は、ぜひ、ベルモンド扮する冒険小説家の妄想と現実が<かかり結び>のように交錯し、ナンセンスな笑いが炸裂するフィリップ・ド・ブロカ監督のケッサク『おかしなおかしな大冒険』(73)をリバイバルしてほしい。

20/10/30(金)

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