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水先案内人のおすすめ

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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

騙し絵の牙

大泉洋は、男の中の男だ。 男がめざすべき男、と呼んでいいかもしれない。 気遣いとサービス精神の塊ゆえ、その実践力が際立ちすぎて、“なんだか楽しげなひと”というパブリックイメージになっていることが歯痒いくらいだが、きっと本人はそんなことはどこ吹く風で、自分のできることを淡々と継続している様が、これまた、この上なくカッコいい。 そんな大泉洋のダンディズムを、意外なかたちで炙り出したのが本作。 廃刊寸前のカルチャー雑誌、その起死回生に臨む新編集長の、汗くささを一切漂わせないクールな奮闘ぶりを、曲者揃いの登場人物を相手にする“受けの演技”の積み重ねから体現している。 誰もが思い描く饒舌な大泉洋の像をさらりとかわし、淡々と何食わぬ顔で事態をすり抜けていく、抑制の効いた風情は、むしろ本領発揮の趣。 丁々発止のやりとりで、お手軽な快楽を見出すのではなく、ときに一歩退き、ときにゆらりとズラす小技の数々によって、魅惑的な人物の見えざる内面を“点描”すること。 その粒子のありようまで、大泉洋は男前だ。

21/3/2(火)

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