“見事なまでに狂ってる”という“Indie Wire”の評は言い得て妙。カンヌ国際映画祭ではパルムドールこそポン・ジュノ監督の『パラサイト 半地下の家族』に譲ったものの、審査員賞を受賞し、ブラジルに初めての栄冠をもたらしたのをはじめ、世界各国の映画祭・映画賞で57部門ノミネートのうち25部門受賞という圧倒的な評価を受けた『バクラウ　地図から消された村』は掛け値なしの“怪作”。好き嫌いははっきり分かれる映画だが、ブラジルの片田舎で起きる不可解な出来事と暴力の災禍はホドロフスキーもびっくりするに違いない強力さで観る者を混沌の世界に引き込んでいく。 監督は40歳という若さが信じられないくらい手練れの技でまとめているュリアーノ・ドルネレス。ソニア・ブラガやウド・キアといった曲者俳優がキャスティングされているのも納得の「血と暴力に彩られた現代の寓話」に僕は酔わされた。

20/11/24(火)