Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

日本で(多分)一番多くの映画を観る(年間800本!=新作、旧作も入れると…)映画評論家

野村 正昭

映画評論家

狂猿

まさに満身創痍とは、このこと。全身、無数の傷あとが痛々しく、デスマッチ界のカリスマ葛西純の戦歴を、何よりも、その肉体が雄弁に物語る。凶器アリ、反則ナシの特殊ルールで行われ、プロレスラーの中でも、ひと握りの者しか足を踏み入れないデスマッチの世界が、冒頭から関係者の証言で丁寧に描かれる。ことにデスマッチ第一世代の松永光弘や、大日本プロレス代表取締役社長、登坂栄児の証言は、この世界の輪郭を的確に提示し、観る者の興味をかきたてる。そして現在に至るまでトップの座に君臨する葛西純の、妻や子どもたちとの家庭での姿が描かれることで、リングに賭ける彼の凄絶な生き方が、より立体的に浮かびあがる。好敵手たちとの戦いの数々を、川口潤監督は、臨場感たっぷりに切り取り、最初に息を呑んだ葛西の傷あとがラストでは栄光の象徴のように見えてくる。

21/5/19(水)

アプリで読む