ホン・サンス監督作品のプロデューサーだったキム・チョヒ監督の初長編作品。映画プロデューサーとして人生の全てを捧げてきたアラフォーのチャンシルが家も子も恋人もなく、青春まで無駄にしていたのかもと気づくお話ですが、自身の姿を投影しているようにも見えます。そんなチャンシルに、どうやら恋の予感が訪れますが……。 キム監督は「もう一度勇気を出して、希望を夢見て、前に進むような話を作りたかった」と振り返りますが、現実はそんなに甘くはない？　いえ夢さえ持てば何事も遅くはないし彼女のように生きていけるということでしょうか。 小津安二郎やレスリー・チャンにオマージュを捧げるエピソードが随所に盛り込まれ、映画愛の仕掛けもてんこ盛り。かつては女性が主人公の作品は興行的に当たらないと言われた映画界ですが、作り手と観客が共感できる土壌が広がりつつあるのでしょうか。 ありふれたテーマでもここまでクールにコメディチックな作品に仕上げたキム・チョヒ監督の力量に感心します。

21/1/7(木)