Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

あのこは貴族

「女性の会議は長い」を例に出すまでもなく、何でも先入観はよくないですね。長編デビュー作『グッド・ストライプス』(15年)で新藤兼人賞金賞に輝いた岨手由貴子監督が、『アズミ・ハルコは行方不明』の山内マリコの同名小説を門脇麦&水原希子の共演で映画化。“貴族”役は水原かと思いきや、門脇の方だった。そして、このキャスティングが見事にハマっている。 東京の上流家庭で育った「箱入り娘」の花子(門脇麦)と猛勉強して入った名門の私立大学を家庭の事情で中退した「上京組」の美紀(水原希子)。2人のアラサー女性の物語。貴族という呼び方はやっかみか揶揄かと思いきや、本当に貴族のような暮らしぶり。黄金期の日本映画には上流階級を描いた作品はたくさんあったが、ホテルで親族と会食するような人々はいらっしゃるんですね。 しかし、お嬢様暮らしも大変。格式と慣習に縛られ、目上の人に頷くしかない。門脇は、最初はそんなことに疑問すら持たないお嬢様を好演。主役といえども、受けの演技。感情をそのまま表に出さず、にじませる。これは難役だったろう。一方、水原は、実家の困窮にもめげず、自分の道をなんとか切り開こうとする女性を演じ、まさに好対照。脇を固める高良健吾、石橋静河らのアンサンブルも素晴らしい。 お金があっても、なくても、まだまだ残る女性の生きづらさ。そんな中でも、少しずつ新たな希望を見いだす2人の姿を繊細に紡ぐ。普段は見られない貴族な暮らしを垣間見られ、今、話題のジェンダー問題にも触れられる。女性は大いに共感すると思いますが、男性陣こそ見るべしです。

21/2/24(水)

アプリで読む