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水先案内人のおすすめ

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エンタテインメント性の強い外国映画や日本映画名作上映も

植草 信和

1949年生まれ フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

女たち

篠原ゆき子、倉科カナ、高畑淳子の熱演を称賛せずにはいられない『女たち』(映画評論家野村正昭は『熱演という言葉が生温く思えるほど』と絶賛している)だが、個人的には荒木一郎の忘れ難い名曲『妖精の詩』が主題歌として使われていることの衝撃のほうが強かった。 『妖精の詩』は、荒木が羽仁進監督の同名映画(1971)のために楽曲した主題歌。前田美波里とマイク真木歌唱のレコード発売が翌年になるなどの複雑な過程を辿ったために、世間的にはあまり認知されていない(荒木本人がカバーしたのは1975年のこと)が、ファンの間では名曲中の名曲として知られている。〈淋しくないとは言えないけれど~〉のフレーズをもつこの名曲は、本作プロデューサーの奥山和由に「この楽曲を通して伝えたいものの答えがあるような気がして同曲を主題歌にした」と決意させる。 自然に囲まれた山あいの小さな町。40歳を目前にした独身女性・美咲(篠原ゆき子)は、半身不随の母(高畑淳子)の介護をしながら地域の学童保育所で働いている。娘を否定し罵詈雑言を浴びせ続ける母との確執、結婚を約束していた恋人の裏切りなどにより破滅寸前の彼女に、唯一の心の拠りどころだった養蜂家の親友・香織(倉科カナ)の自死という衝撃が襲う。 コロナ禍の閉塞状況の中で壊れていく『女たち』の女たちを慰撫する、半世紀前の名曲『妖精の詩』。映画と音楽の幸福な出会いよって生まれた本作は「チームオクヤマ」25周年作品。監督はPFFアワード出身で『おだやかな日常』『ぼくらの亡命』の内田伸輝。

21/5/27(木)

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