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いまみるべき1本を毎日お届け!
音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています
佐々木 俊尚
1961年生まれ フリージャーナリスト
BLUE/ブルー
21/4/9(金)
新宿バルト9
ボクシング映画というのは、なぜこれほどまでにわれわれを惹きつけるのだろうか。主人公は3人のボクサーであり、松山ケンイチと東出昌大、柄本時生がそれぞれ演じている。実はこの3人は、2016年の将棋映画『聖の青春』でも共演した。ボクシングも将棋も、決定的な勝敗があり、人生の退路のなさが残酷なまでに突きつけられるところが、とても共通している。そしてボクシング映画も、将棋映画も、つねに敗者が描かれ、敗者をどう描くかということに物語の精神は傾けられる。 本作の𠮷田恵輔監督は、「流した涙や汗、すべての報われなかった努力に花束を渡したい気持ちで作った」と語っている。まさに敗者の物語であり、「しかし、それでも人生は続いていくのだ」という21世紀的な人生哲学にあふれた素晴らしい作品。昨年の『アンダードッグ』に続いて、ボクシングの傑作が日本から立て続けに出てくるとは!
21/3/29(月)