ついに東京での最後の展覧会となってしまった原美術館。2021年から群馬に拠点を移すので、完全な「閉館」というわけではないけれど、渡辺仁の設計による建物のなかで作品を見られるのはこの展覧会まで。非常にせつない。 本展に参加するリー・キットや佐藤雅晴をはじめとする5名は時間や空間をテーマに創作活動を行う作家たち。移ろいゆく光景や瞬間をとらえた作品は、館内のピアノが奏でるドビュッシーの『月の光』により、よりエモーショナルに感じられる。とくに佐藤時啓による原美術館やハラミュージアムアークを舞台にした作品は、これまでに美術館が作ってきた、かけがえのない時間や空間すべてをすくい取り、丁寧に写真のなかに入れ込んでくれたよう。すべての空間と空気を心のなかに刻みつけたくて、会期末までに何度も通ってしまいそう。

20/10/11(日)