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いまみるべき1本を毎日お届け!
ダメな人が出てくる情けない話やバカげた映画を中心におススメ
村山 章
映画ライター
ティーンスピリット
20/1/10(金)
新宿ピカデリー
エル・ファニングが歌まで上手いことは『パーティで女の子に話しかけるには』で分かっていたが、1本の映画をまるまる支えるほどに歌えるとは! 本作の“歌手のコンテストで田舎の閉塞感から抜け出そうとする少女”役は“そこそこ上手い”レベルでは絶対に務まらない。エル・ファニングおそるべし。 ただ、たぶん本作を内容の薄いアイドル映画と思う人はいるだろう。40歳以上なら「MTVっぽい」なんて感想を持つかもしれない。確かに一見テレビ番組やミュージックビデオっぽい(実際にテレビのオーディション番組がモチーフだ)が、目まぐるしい映像の中に、キャラクターの心情や背景をうかがい知る情報がさりげなく散りばめられている。説明セリフに頼るでもなく、オーソドックスな語り口に落ち着くでもなく、タペストリーのようにエモーションを織り込んだストイックな演出に魅了された。使い古されたようでいて、実はかなり新しい表現の可能性ではないかと思っている。
20/1/18(土)