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パール兄弟、作詞家、プロデューサーとして、音楽を中心に活動中

サエキけんぞう

ミュージシャン

アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい

ちょっと先の公開だが、権利の関係上も手伝い、短期の上映は間違いなく、絶対見逃してはいけないので、注意を促しておく。 フレンチ映画シーンのミューズで、先ごろ亡くなったばかりのアンナ・カリーナの出演映画シーンを駆使した評伝ドキュメント。しかも、映画館でそれらを観るという演出で、亡くなる前のアンナ自身が出演している。まさに、アンナの視点で彼女の人生を振り返る、ファンにはたまらない一品である。 アンナは、戦前の1940年デンマークのコペンハーゲン生まれ。遠洋航路船長の父と19歳の母との間に誕生で、戦争をはさみ、過酷な幼少時代を過ごす。その描写が簡潔ながら濃密。境遇に感情移入しながら、彼女のキャラクターを思わず重ね合わさずにはいられない。パリのサンジェルマン・デプレにたどり着き、ココ・シャネルに出会い、シャネルにアンナ・カリーナと命名されるという運命が凄い。恐らく、そこで扉が開き、波乱万丈の人生が開幕する。 もちろん、その直後に見初めるのがジャン=リュック・ゴダール。『女は女である』『女と男のいる舗道』『気狂いピエロ』と、ゴダールのみならず時代の、ヌーヴェル・ヴァーグ後期のミューズとなっていく。サンジェルマン・デ・プレを中心に差しはさまれるエピソードが、まさにキラキラとした60年代の映画シーン。 セルジュ・ゲンズブールの存在感が大きいのが、音楽ファンにとってはうれしい。ゲンズブールが音楽を務め、出演したミュージカル映画『アンナ』(65年)はこの映画の中心的存在、アンナの魅力を描いた筆頭映画と描かれている。ヒッピー時代到来の直前に花開いた、このキュートな映画が、アンナにとっても忘れられないメルクマールとなったことは、フレンチ・ポップス・ファンにとっては誇りである。 その後については、詳しく知らなかったが、ハリウッドではばたき、監督も多く務めるなど、常に時代の先端をいっていたことに驚かされる。来日公演も含め、詳しく追っている。 挿入されている映画などの権利関係上、本来日本では公開できない作品だったが、今回プロデューサーの各方面への尽力により今年限りという条件で許諾されている。今年3回忌を迎える故・寺尾次郎字幕デジタル・リストア版『気狂いピエロ』も上映権利期間終了間近のため、あわせて同劇場での日本最終公開が決定している。 フランス映画ファンは銘記されたい!

20/6/5(金)

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