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Tak

美術ブロガー

もうひとつの江戸絵画 大津絵

江戸時代、東海道大津宿の追分周辺で旅人のお土産として販売され人気を博していた大津絵を展覧会でどう紹介すべきか。「東海道五十三次」と関連付けた展示にしようか…といった案もあったそうですが、採択されたのは大津絵蒐集家(コレクター)にスポットを当てる方法でした。だから、展覧会ポスターに「欲しい!欲しい!欲しい!何としても手に入れたい! 誰がための画かー民衆から文化人へ」と記されているのです。 美しい浮世絵(錦絵)は江戸時代から蒐集の対象でしたが、大津絵はあくまでも土産物にすぎません。扱いもぞんざいとなり後世に遺されたものは多くはありません。数百年後にまさか美術館で展覧会が開催されるとは、大津絵を描いていた職人や店の旦那さんが知ったらきっと腰を抜かして驚くことでしょう。 「大津絵十種」と称される定番の画題(外法の梯子剃り、雷公、鷹匠、藤娘、座頭、鬼の寒念仏、瓢箪鯰、槍持奴、釣鐘弁慶、矢の根五郎)は、今回の展覧会でも何種類も見られるので、見比べると微妙な差異が見つけられとても楽しめます。ただ同じ画題の作品を見比べるだけではなく、コレクターの好みや審美眼を比較するのが出来る点が、今回の展覧会の一番大きな要となります。展覧会の構成は大津絵が描かれた時代順や画題毎ではなく、蒐集家別の展開となっているのです。 明治期以降、大津絵に美術的な価値を見出し、コレクションすることでその価値を決定付けたのは当時の画家や文化人たちでした。富岡鉄斎、浅井忠、梅原龍三郎、柳宗悦、山村耕花、吉川観方そして小絲源太郞(展覧会にはまだまだたくさんの収集家が紹介されています)。初公開となる作品も多く、大津絵にこれだけまとめて触れられる機会は初めてのことです。難しく考えなくても大丈夫です。ご自宅にある旅の思い出の何気ないお土産品と同じかそれ以下だった(長屋の壁に空いた穴を塞ぐのに使われたこともあったはずです)大津絵。日本に残る大津絵を総動員しあまさに「大津絵名品展」という側面もあります。肩の力を抜いて東京駅まで!ところでお土産は何を買って帰りましょうか。

20/10/8(木)

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