ひとりの女性の受難の物語であると同時に、復讐劇であり、なおかつ変容のドラマでもある深田晃司監督の本作は、ジャンル分けさえも難しい。あえて形容するなら、外見だけでは容易にうかがい知れない人間という生き物の闇をあぶり出すヒューマンミステリーというべきか。 筒井真理子扮する訪問看護師の主人公は、時間軸の操作によって現在と過去のエピソードが同時進行する前半から、善良な優しさと妖しい魔性というふたつの“顔”をのぞかせていく。そして、ある誘拐事件の意外な成り行きがストーリーのターニングポイントとなり、主人公の悪夢のような運命を見つめるこの映画は、私たち観客の日常がいかにもろく壊れやすいものであるかを、静かに生々しく問いかけてくるのだ。トリッキーな構成のミステリー劇を、超然とした視点で語る深田演出も冴え渡る快作！

19/7/26(金)