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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

おもかげ〈2019年〉

映画は予想を裏切られることが楽しい。想像通りに物語が進まないことの意外性。『おもかげ』は、そんなミステリアスな展開が魅力の作品だ。 スペインで暮らすエレナには、元夫との間に6歳の息子イバンがいる。元夫とイバンが旅行中に、エレナの携帯が鳴った。イバンからだった。海辺にいるが、父親が戻ってこなくて不安だという。近くに怪しい男がいると告げたあと、電話は切れる。それが息子との最後の会話となった。10年後、エレナはイバンが行方不明となったフランスの海辺で、レストランの店長として働いていた。ある日、夏の間だけパリからやってきた美しい少年ジャンと浜辺で出会い……。 冒頭、電話で息子と話す14分近い長回し撮影が圧巻だ。カットを割らないことで不安感が一層リアルに伝わってくる。ミステリータッチの導入だが、物語は違う様相を見せ始める。失った息子の面影を重ねるエレナと、そんな大人の女性に惹かれていくジャン。スペインの新鋭ロドリゴ・ソロゴイェン監督は、母性と恋愛感情が交錯する複雑な心情を、あえて夏らしくない薄曇りの寒々とした光を背景にすることで効果的に描いてみせた。広角レンズを多用した緊迫感がみなぎる構図も印象的だ。

20/10/21(水)

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