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水先案内人のおすすめ

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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

映画 太陽の子

三位一体。 現代日本を代表する演じ手3人が顔をあわせ、それぞれが、それぞれにしか成しえぬ表現の昇華に辿り着き、このときにしか訪れない最高密度の融合を披露している。 物語はシリアスで過酷だが、その芸術のありようには、晴れがましさを感じる。演技とは何か。その答えが、ここではいささかの躊躇もなく開陳されているように思えるから。 演技とは、己の信じる道を究めた果てに、そっと手放す勇気であり、開いた掌から飛び立つ蝶の鱗粉のこと。 柳楽優弥の、たおやかでありながら、強靭な境界線上のアリアを奏でる、静謐の凄み。研究に没入することの、逃避と夢想の出口のなさを、いささかの悲愴感も漂わせず、ある意味“脳内”で完結させている。呆気にとられる圧巻の重心力。 有村架純の、あくまでも日常を守りながら、未来への希求を手離さず、カジュアルに生きようとする骨太さも、コロナ禍を生きる世界人類なら、涙を禁じ得ない。祈りとは、イメージではなく、極めて“身体”的なものなのだと痛感させられる。 そして、三浦春馬。無尽蔵のポテンシャルで、無限大に拡がり、作品を覆い尽くす“笑顔”の破壊力は、観る者の脳裏に永遠に残る。気遣いの笑顔、血縁の笑顔、諦めの笑顔、無念の笑顔、旅立ちの笑顔。そのすべてが忘れられない。 私たちは弱者だ。だから、芸術が必要。このような時代だからこそ、このように真摯な芸術が、必要なのである。

21/8/4(水)

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