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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

私をくいとめて

恋する瞳、そして人との「距離感」を描いた作品だ。 綿矢りさ原作『勝手にふるえてろ』(2017年)で称賛を浴びた大九明子監督が、再びこの作家の小説に挑んだ。会話の長さや空間を縮めるジャンプカット、手を意識した演出で、男女の揺れる心を視覚化する。 31歳で独身会社員のみつ子(のん)は“おひとり様生活”を楽しんでいる。大学からの唯一の親友は結婚してイタリアに。みつ子が1人でも気楽なのは、実は心強い相談役がいるから。自身の脳内で生み出した分身「A」の存在。トラブルや人間関係で悩んだ時、Aは男性の声で常に心を落ち着かせる助言をくれた。穏やかに過ごしていたある日、勤務先に出入りする年下営業マンの多田(林遣都)と自宅アパートの近所でばったり出会う。意識する日々が始まり……。 カメラはみつ子の瞳をとらえる。時には恋に浮かれる心情が、不安が、自分への嫌悪が、そこに映る。手に寄ったシーンも印象的だ。みつ子と多田が接近し、手が自然とつながれる。仏巨匠ロベール・ブレッソンを想起させる演出だ。食事に招いた多田が帰り、みつ子は「この部屋、こんなに広かったっけ……」とつぶやく。ローアングルで狭い部屋を広く見せる構図が切ない。

20/12/14(月)

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