『擬態』。それは生きていくための術。 個人的に憂えていたJホラーに、一筋の光明を感じさせるエログロ上等！のスラッシャーホラーが現れた。きわめて日本的な映画にも関わらず、グローバル感を感じさせる不思議。本作に「Jホラー感」はほとんどない。 虐待する加害者の唐突な暴力には「実際こんな感じなんだろうな」という説得感があり、スクリーンの向こう側で起きていると知りつつも一瞬身構える。そこにあるのは理由ではなく衝動だ。人間社会は問題が山積で、大人は常に利己的で恐ろしく、間違えてばかりだ。子供たちはまだ知らないけれど。 蓋を開けてみれば、連鎖する虐待、生命倫理、消費社会、管理社会、原発、詐欺……数々の社会の病巣がこの映画には潜んでいる。生き延びなければ。この希望のない世界をサヴァイヴしなければ。『擬態』そして『順応』で。 本作の鑑賞後、私たちを待っているのは“疲労困憊”だ。もちろんいい意味で。

20/10/29(木)