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ドキュメンタリーの面白さを知ると映画の見方が変わる
村山 匡一郎
映画評論家、大学講師
戦火のランナー
21/6/5(土)
シアター・イメージフォーラム
1990年代初めのスーダン内戦によって故郷を追われ、家族と生き別れてアメリカに移住したグオル・マリアル少年。その彼が長じてロンドン・オリンピックに個人参加し、独立した南スーダンに希望の灯としてスポーツを広める姿を描いたドキュメンタリーだ。当時の内戦やオリンピックの記録映像に本人のインタビューを交えながら、マリアル選手の過酷な半生が綴られるが、内戦下の少年時代はアニメで描かれて面白い。内戦下で彼は敵側の兵士に捕らえられるが、走って逃げることで生き延びる。その思い出は、マリアル選手にとって、走ることが生きることにつながるまさに象徴といえる。戦禍はスポーツを含めてあらゆる文化的な活動を無効にさせるが、逆境の運命を生きる希望とする実話には魅了される。
21/5/22(土)