短いシチュエーションでの起承転結を次々と積み重ねながら、人それぞれの悲喜こもごもが淡々と綴られる。 その決定的瞬間を映すものは多くはなく、事前や事後だけを映す行間によって心情を伝えてくるケースも多々ある。この伝え方がそれぞれに秀逸。女性の淡々としたナレーションが見事にマッチして、映像の裏側のニュアンスがじんわりと伝わる。 戦地で処刑されそうになり、必死に命乞いする兵。戦いに敗れ、寒風の中をシベリアの収容所に向かって重い足取りで歩く無数ドイツ兵。 ……といった重いエピソードから、道を間違えて知らない店に入り気まずい、車が田舎でエンストして困った、……といった日常のちょっとしたエピソードまで、全てが並列に語られているのが面白い。 度々出てくる者もいる。中でも信仰を失い苦しむ神父の救いの無さは尋常ではない。

20/11/20(金)