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水先案内人のおすすめ

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洋画、邦画、時々アニメ 映画で人生が変わります

堀 晃和

ライター&エディター。記者歴27年、元産経新聞文化部長。映画と音楽と酒文化が守備範囲。

アンダードッグ 前編

“長さ”を感じない映画がある。3時間4分の『ディア・ハンター』、2時間57分の『ゴッドファーザー』などが好例だろう。『アンダードッグ』は前編+後編で4時間36分。一気に観ても疲れない。映像にのめり込めた。時間を忘れた。 主人公は、場末のデリヘルで運転手をしながら、かつての栄光にしがみつくボクサー・末永晃(森山未來)。自身が最も輝いた日本タイトルマッチから7年が経ち、今では有望な若手の踏み台として試合に臨むアンダードッグ(かませ犬)に。そんな燃えカスの状態でもリングに立ち続けていたが…。 前編ではお笑い芸人との不本意なエキシビションマッチ、後編では養護施設で育った新人ボクサーとの対戦が描かれる。物語は晃とこの2人を軸に、別居した妻子、デリヘル嬢のシングルマザーら過去を背負った人物を丁寧になぞりながら進んでいく。後編に流れるブラームスの交響曲第3番第3楽章が悲壮感を醸し出す。熱く切ない重層的なドラマだ。 鍛え上げられた肉体でぶつかり合うボクシングシーンが素晴らしい。細かいカットを重ねて被写体に寄った名作『レイジング・ブル』を想起させるカメラワークが、リングの熱気をスクリーンの向こう側まで伝える。

20/11/25(水)

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