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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

アンダードッグ 前編

多数の映画賞に輝いた『百円の恋』の製作陣が6年ぶりに再結集したボクシング映画は前編131分、後編145分、計4時間半を超える意欲作だ。しかし、長さも気にせず、一気に見てしまうこと間違いなし。魅力ある作品に仕上がっている。 題名は“かませ犬”の意味。スターダムを駆け上がるトップ選手の踏み台となりながらも、過去の栄光が忘れられず、ボクシングにしがみつく男・末永晃(森山未來)を中心に、テレビのキワモノ企画でボクシングに挑戦する、売れない二世のお笑いタレント宮木瞬(勝地涼)、養護施設で晃と出会い、いつかは晃を倒すことを夢見る若者、大村龍太(北村匠海)の三者三様のドラマが交錯する。 原作・脚本の足立紳氏は今年、自身の体験を基にした『喜劇 愛妻物語』で、笑いあり、涙ありのホームドラマを見せてくれたが、本作ではスケールの大きな群像劇を描き出す。自身もどん底を味わっただけに、地べたな感情描写がリアル。箸休みのコミカルなシーンも忘れない。それを武正晴監督が丁寧に映像化し、観客の感情をクライマックスのボクシングシーンへと導く。 前編のキモは、勝地涼のエピソード。今や伝説となった『あまちゃん』での“前髪クネ男”の再来を思わせるコミカルな演技からガチのボクシングシーンまで演じ分け、ライバル役ながら声援を送りたくなる魅力あるキャラに仕上げた。森山と北村の対決が焦点となる後編への「前座試合」をしっかり務めている。ボクサー役の3人はしっかり体作りも行っているようで、試合シーンでの腹筋にも注目。ボクサーたちと絡む女性陣にも、瀧内公美、水川あさみ、冨手麻妙、萩原みのりといった演技巧者がそろっている。 長尺のボクシング映画といえば、寺山修司氏の原作を、菅田将暉&ヤン・イクチュン共演で映画化し、全6話のU-NEXTでの配信版も作られた『あゝ、荒野』(17)を思い出すが、この『アンダードッグ』もABEMAプレミアムでの全8話配信が決定。ここでは、映画版では描かれなかった脇役たちのドラマも加わっているそうで、また違った魅力を見いだせそうだ。

20/11/27(金)

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