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映画史・映画芸術の視点で新作・上映特集・映画展をご紹介

岡田 秀則

1968年生まれ、国立映画アーカイブ主任研究員

川本喜八郎+岡本忠成 パペットアニメーショウ2020

「アニメーション」とひと口に言うけれども、人形などの立体を撮影するストップモーション・アニメーションは、二次元の絵を動かすアニメーションに比べてなかなか顧みられない分野だ。アメリカにレイ・ハリーハウゼンあり、チェコにイジー・トルンカあり、世界にはこのジャンルを築いた何人かの巨人がいるが、この日本にも忘れがたいアーティストがいる。 先駆者・持永只仁の業績については、東京国立近代美術館フィルムセンター(今の国立映画アーカイブ)が2017年に展覧会と上映会を開催したが、この2020年には、持永を師とする川本喜八郎と岡本忠成にフォーカスが当たる。 プラハに留学してトルンカの薫陶を受けた川本は、人形を作り、動かすことをひとつの道として生涯を歩み、自国の芸術に目を向けよというトルンカの教えに沿い、東洋的なテーマに心を砕く。『道成寺』の鬼気迫る女の造形。『蓮如とその母』の人物たちがまとう凛々しさ……。 一方で岡本作品はアニメートする素材自体が木・皮・布・毛糸・紙・粘土と多様であり、造形にも毎回異なるアイデアを取り入れて、似通った作品が一つもない。『おじいちゃんが海賊だったころ』の木彫り人形が持つ微笑ましい荒々しさ。『おこんじょうるり』の、人形の名手保坂純子によるきつねと婆さまのあたたかな造形。 《求道》と《華麗》-対照的な作風である。だからこそ、この二人が1972年から6度にわたって企画した映画上映+人形劇公演『川本+岡本 パペットアニメーショウ』の章は、この展示のクライマックスとなる空間だ。芸術の上ではライバルだが、冬にはスキー旅行をともにする盟友だった両作家。来年には関連企画として、その代表作を4Kデジタル修復するプロジェクトも株式会社WOWOWプラスの主導で動き始める。2021年に向かって、改めて日本の立体アニメーションの素晴らしさを堪能していただきたい。

20/12/23(水)

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