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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています

佐々木 俊尚

1961年生まれ フリージャーナリスト

ドーナツキング

ドーナツ店経営に成功し、「ドーナツ王」になったカンボジア移民……というシンプルな物語を予想していたら、良い意味で裏切られた。後半の展開は実に現代的であり、さまざまな気づきがある。 物語の背景には、カンボジア大虐殺がある。1970年代後半に内戦でクメール・ルージュが政権をにぎり、悪名高いポル・ポト率いるこの武装組織は強制収容所や強制移住によって人口の4分の1にものぼる150〜200万人を死に至らしめたとされる。大虐殺はアカデミー受賞作の『キリング・フィールド』に描かれたことで有名で、ラストシーンに流れる『イマジン』を覚えている人も多いだろう。 本作の主人公はカンボジアの軍人だったが、クメール・ルージュの支配を逃れて難民として家族でアメリカに渡った。ただドーナツ王として成功しただけでなく、後からやってきた多くのカンボジア難民たちの身元引受人にもなる。素晴らしい人格者だったが、それだけではない影の部分も持ち、それがまたたまらなく魅力的でもある。 監督はアリス・グーという新人だが、なんとリドリー・スコットが製作総指揮に名を連ねている。主人公の数奇な半生に惚れ込んでしまったのだろうなあ、と納得できる完成度の高いドキュメンタリー。

21/10/12(火)

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