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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

Arc アーク

もし不老不死の薬が開発されたら、諸手を挙げて喜ぶことができるだろうか? 永遠の若さを手にし、やがてやってくる死への恐怖を感じることなく愛する人と一生過ごしていく。 『蜜蜂と遠雷』より前に原作に出会い、映画化を切望していた石川慶監督が、自分にしか描くことができない映像表現で、人生とアートを融合させた美しくも危険な世界を私たちに見せてくれる。この映画を説得力あるものにしているのはキャスティングであり、主演の芳根京子の才能により、ひとりの女性のドラマチックで長い人生を一緒に旅している気分にまでさせてくれるのだから。 「人類は進化するほど退化する」という言葉が浮かんだのは、時代が進むにつれ、レトロな色合いになっていき、ヘアメイクも衣装も美術もクラシカルなスタイルになっていくことから。スマートフォンがどんどんバージョンアップするように、急速に進む時代に取り残された人と、流れに乗って上手く順応していく人。映画は“不老不死”の選択から、二極化した人間の表情を映し出す。 だけど時代の流れに順応している人々は、もしかしたら生命の儚さ、人生の美しさに目を向けず、生物のサイクルに抗っているだけなのかもしれない。観ているうちに他人事ではなくなる私たち自身の物語だ。

21/5/27(木)

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