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一瞬がすべてを救う映画、だれも断罪しない映画を信じています

相田 冬二

ライター、ノベライザー

チィファの手紙

今年は、岩井俊二監督の新作が3本も公開される記念すべき年である。 2020年は、世界的にとんでもなく大きな出来事があった年ではあるが、このメモリアルを忘れずにいたい。 1月にロードショーされた『ラストレター』のセルフリメイク。というのは正確ではない。撮影は『ラストレター』より早いし、中国での公開も『ラストレター』に先行していた。これは『ラストレター』の“姉”である。 中国で撮影され、キャストは全員中国人。だからこそ、岩井映画がはらむ普遍性がまざまざと伝わる。一風変わったシチュエーションであるにもかかわらず、共感ポイントがさまざまに埋め込まれていて、その出逢いの集積が、観る者の感性の“器”を体感させる。簡単に言えば、ああ、自分は生きているのだな、ということなのだが、洗練された語りの術を通して降りたってくれるのは、案外シンプルなことだ。 岩井映画を旅することは、複雑な世界から単純な真実を見つけだすことであり、本作は“海外”を通過しているからこそ、その航路が鮮やかに伝わる。 『ラストレター』とは似て非なる人格を持つ。特に、しっとりとした情感は、いつまでもあとをひく、旅の残り香だ。

20/9/10(木)

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