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水先案内人のおすすめ

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文学、美術、音楽など、映画とさまざまな構成要素に注目

高崎 俊夫

1954年生まれ フリー編集者、映画評論家

ドクター・スリープ

スティーヴン・キングの『シャイニング』の続篇の映画化だが、監督のマイク・フラナガンのささやかな野心はスタンリー・キューブリックの『シャイニング』のヴィジュアル・イメージを常に念頭に置きながら、周到に構築された続篇を実現することにあったといえるだろう。そして、その試みはかなり成功している。五歳の超能力者として厳寒のホテルの惨劇を生き延びたダニー少年の三〇年後が描かれる。ユアン・マクレガー演じる中年男ダニーはかつての父親と同様アルコール依存症になり果て、ヒステリックで暴力に塗れてもいる。その彼が敗残の淵から再生するために、超能力を持つ一二歳の少女とタッグを組んで、子供の精気を吸い取るモンスター集団と熾烈な攻防戦を繰り広げるのだ。時折、何気なく挿入される、一本の道が地の果てまで伸びてゆくかのような荒涼たるアメリカのロードサイドの風景やスモールタウンの情景が目に焼き付く。クライマックスの雪に閉ざされた幽霊ホテルでの死闘は、双子の少女、エレベーターの血の奔流とキューブリックバージョンのイメージを援用している分、いささか予定調和的だが、2時間31分の長丁場を悠然と語りきるその円滑な話法にはひたすら感心した。

19/11/26(火)

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