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夏目 深雪
著述・編集業
タロウのバカ
19/9/6(金)
テアトル新宿
大森立嗣は『まほろ駅前』シリーズのようなまったりとした系譜と、処女作『ゲルマニウムの夜』から近作の『光』に連なる「ヤバい」系があるが、これは後者の中でも最もヤバい。 少年タロウは戸籍がなく、学校に通ったこともない。名前も仲間から「名前がない奴はタロウだ」とつけてもらった。育児放棄の問題を中心に据え、障害者も重要な役割で登場する本作は、だが周縁にいる「からこそ」の絆の強さや小さな幸せを謳ったりはしない。タロウ、仲間のエージとスギオが暴力の連鎖に巻き込まれ、自滅していく姿をエモーショナルに描く。YOSHI、菅田将暉などの快演もあり、おぞましいエピソードの連続なのに、青春映画の傑作とでも呼べるものになっている。
19/9/3(火)