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水先案内人のおすすめ

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歌舞伎とか文楽とか…伝統芸能ってカッコいい!

五十川 晶子

フリー編集者、ライター

歌舞伎座三月大歌舞伎

第一部の『戻駕色相肩』というちょっと古風な歌舞伎舞踊をご紹介する。 京都の紫野では、浪花の次郎作と東の与四郎の駕籠かき(かごかき)が、禿を乗せて登場。二人は地元の廓話を始める。与四郎は江戸の吉原を、次郎作は大坂の新町を、禿が京都の島原の遊郭の情景を演じていく。ところが二人の懐から香炉や連判状が落ちてしまい、与四郎が真柴久吉、次郎作は石川五右衛門と正体が知れるが……という想像の遥か斜め上をいく物語設定が豪快で楽しい。 与四郎が姉さんかぶりとなって悪身という女性の振りをして踊り、与四郎が客となって色事を踊って見せたり、『関の扉』の「生野暮薄鈍(きやぼうすどん)」の当て振りを見せたり、あちこちに見どころがしかけられている。そして最後はお互いに見あらわしとなり、刀を仕込んだ仕込み杖で斬りあう所作ダテとなって終わる。 江戸歌舞伎の花が開いた天明8年11月に中村座で初演された。初演では次郎作に実悪の名優初代中村仲蔵、与四郎に和事実事を得意とした、ちょっとクセある四世松本幸四郎が扮した。11月といえば顔見世の月。この月を起点に芝居小屋では”新年度”が始まる。この舞踊も顔見世狂言の一幕だ。座組の役者達の文字通り顔見世、お披露目のための狂言ということもあり、もはや理屈抜き、筋立てより役者の個性を際立たせつつ華やかさにあふれる内容となり、荒唐無稽なお芝居も珍しくない。ちょっぴりばかばかしくも歌舞伎味たっぷりの設定を楽しんでほしい。

21/2/28(日)

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