映画館が大好きな人間だが、「映画は必ず劇場で観るべき！」と強弁する気はない。どんな環境で観たとしても、作品との素晴らしい出会いの可能性は必ずあると思っているからだ。しかし『ようこそ映画音響の世界へ』は、「絶対に映画館で観るべき」数少ない例外。映画の音響スタッフの素晴らしい仕事に迫ったこのドキュメンタリーは、映画音響の奥深さを映画館の音響システムを駆使して伝えてくれるのだ。 エジソンの蓄音機まで歴史をさかのぼり、無声映画からトーキー、モノラルからステレオ、そして5.1chのサラウンドを駆使する現在までを、古今の名作のシーンや映画人たちのコメントを通じて分かりやすく解説してくれる。映画ファン的にはさらにコアでマニアックな内容でも大歓迎なのだが、ギリギリのラインで分かりやすさをキープしているのは、間口を広げるという意味で正解なのだろう。 ちなみに音響に並々ならぬ情熱を注いできた立川の映画館シネマシティでは、このドキュメンタリーを最大スクリーンで上映するという本気っぷりを見せているので、日帰りできる距離の人にはシネマシティが誇る極音上映での鑑賞をおすすめします！

20/9/9(水)