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音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています
佐々木 俊尚
1961年生まれ フリージャーナリスト
誰もがそれを知っている
19/6/1(土)
ル・シネマ
ハビエル・バルデムとペネロペ・クルス、それに『瞳の奥の秘密』主演のアルゼンチン俳優リカルド・ダリンという、思い切り顔も演技も濃い3人が主人公。明るい陽光が降り注ぐスペインの田舎街を舞台にして、まるで古い神話劇のように蜜がたっぷりの人間劇がくりひろげられ、本当にすごい。特にハビエル演じるワイン農園主が、すべてを捨ててまで自分の役割を引き受け、昔の恋人とその娘を支えていこうとする決断、その時にハビエルが見せる悲しみとあきらめと決意がいりまじったような表情が圧巻だった。この表情を見るだけのためにもこの映画は観た方がいい。 監督はイランの監督アスガー・ファルハディ。イラン監督がスペイン語の映画?と不思議がる人もいるかもしれないが、ファルハディの名作『彼女が消えた浜辺』を覚えている私には、彼がこういう境地に達したのはすごく納得できるし、グローバル時代にあらゆる世界を感情で貫くことのできる数少ない映画人だと思う。
19/5/28(火)