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水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
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音楽は生活の一部、映画もドキュメンタリー中心に結構観ています

佐々木 俊尚

1961年生まれ フリージャーナリスト

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

アウトサイダーアートの極致として知られるフランスの「シュヴァルの理想宮」。田舎に住んでた普通の郵便配達人が突然なにかに目覚め、石を拾ってきては加工して積み上げ、高さ10メートル、幅26メートルにもなる宮殿をたったひとりで作り上げた。かけた時間は33年、時間にしてなんと9万3000時間。その人生をドラマとして描いたのが、本作。アウトサイダー・アートというとヘンリー・ダーガーの絵物語を真っ先に思い出す人も多いだろうし、なにか“変人で世捨て人”がつくった奇怪な作品群というイメージをもたれやすい。本作の主人公のシュヴァルも確かに変人ではあるのだけれど、彼を支える妻と娘、息子を描くという視点を持ったことによって、本作は既存のイメージとはまったく異なる“愛”の物語へと昇華している。 シュヴァルは変人だけれども、誰も傷つけない。理想宮を築くのと同時にちゃんと仕事もしていて、郵便配達を定年まで勤め上げている。そういう彼をバカにすることは誰にもできないはずだ。私たちはつい“変人”のような人たちを社会から外れた規格外の扱いをしがちだけれども、そういう人たちを私たち自身が支えていくことも社会の多様性や新たな芸術表現の可能性のためにも大切なことなのだ。そういうことも感じさせる作品だった。 それ以上に、本作には全篇にしみじみとした情感が溢れていて好感。

19/12/10(火)

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