2019年というこの時代に、こういう映画を撮る監督が現われてきたのは、昨年の『万引き家族』のヒットにも通じて、なにかの時代の必然かもしれない。片山慎三監督は、ポン・ジュノや山下敦弘などの作品で助監督を務めてきた人だという。 足が不自由な兄が、自閉症の妹に売春をさせるという設定。劇中の描写は正視に耐えないほどだが、1970年代のATG映画を思い出させるまっすぐにストレートな物語でもある。総中流社会と言われたあの時代には、中流の外にいる人たちを映画や文学で描くことが多かった。アウトサイダーという存在に「退屈な日常からの逃走」を仮託し、そこに汚れと同時に希望を見たのだ。平成になって日本が沈滞してか...

19/2/27(水)