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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

ONODA 一万夜を越えて

フィリピン・ルバング島のジャングルにて終戦を知らないまま潜伏した小野田寛郎の30年間を映画化。監督は処女長編『汚れたダイヤモンド』で、外的要因とその人間が元々持つ業のようなものが混じり合って運命を大きく変えていく様を冷徹に描いた、仏の新鋭アルチュール・アラリ。 今作でも小野田役(成年期)の津田寛治、小野田をジャングルから救い出す鈴木役の仲野太賀、小野田のかつての上官である谷口役のイッセー尾形など、的確な配役が功を奏して奇異な物語に不思議なリアリティを与えることができている。鈴木がジャングルに突然現れるシーン、谷口が小野田に任務解除命令を出すシーンはなんとも言えない感銘を受ける。 帰還後は保守系の活動に勤しんだ小野田の生涯に鑑みても、アラリが何故横井庄一ではなく小野田を被写体に選んだのかを考えると感慨深い。それらを決して直接描くわけではないが、想像させる射程の広い傑作である。

21/10/7(木)

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