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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

ドライブ・マイ・カー

演技というものは人の心の奥底を覗き込むようなことなのかもしれない。そう思うのは、演劇のアプローチについて描かれながら、その登場人物たちの胸の内が吐露されていく姿を私たち観客が目にするからで、濱口竜介監督が書き上げた脚本力と俳優陣の演技力を証明する映画でもあるから。 妻の秘密を知ってしまっても十字架を背負うように息を殺して生きていく西島秀俊演じる主人公と、笑顔を失った三浦透子演じるドライバーのシンクロニシティな出会いが自己を見つめる運命をもたらし、ナイーブな俳優の感情を揺さぶっていく。 さすがカンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞しただけあり、登場人物たちが徐々につながり合い、刺激し合って変化していく光景が美しくさえ感じる。 なかでも岡田将生の存在感は際立っていて、センシティブな表現者の迷いや動揺、内に秘めたやるせない感情が表れるある長回しのシーンでは、観ているこちら側もカタルシスを感じるほど。 また、オープニングの夫婦のいとなみを逆光を利用して絵画のように表現しながら、詩的なセリフを自然な会話にさえ思わせる西島秀俊と霧島れいかのナチュラルな演技。それこそ原作である村上春樹の文体に敬意を払い生み出した世界観な気がした。 時間を感じさせない至福の映画体験に興奮し、人間の弱さを認めつつ再生力を信じる物語に感服。

21/8/1(日)

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