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水先案内人のおすすめ

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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

大地と白い雲

モンゴルやチベットの大草原を舞台にした作品は映画祭上映されたものも含め大体チェックしているつもりですが、息をのむような美しい光景が広がる本作の映像にはシビレました。もしかしたらこの作品の主人公は地平線の果てまで連なる大地と物言わぬ白い雲かもしれません。 内モンゴルのフルンボイル草原に住む一組の夫婦。放牧業のチョクトは伝統的な暮らし方より都会での生活にあこがれていますが、妻のサロールは忙しくてもここでの毎日が大好きです。足元にある幸せは見えない夫に対し、妻は空を流れる白い雲に囲まれた今の暮らしに満足しています。価値観の相違は簡単には解消されそうもありません。まるで何事も起きないような展開ですが、後半ある行き違いから動き出します。そんな夫婦が別れ再会の果てに見つけるものは。そして今日も白い雲が流れていきます。 映画を観る人によって感情の移入先は異なるでしょう。価値観のズレは世界共通。正解はありません。大自然の風景に圧倒されながら、現代の遊牧民が経験するであろうジレンマに思いを寄せる作品です。かつては馬や羊が自由に行き来できた草原は鉄条網に囲まれ、羊どころか牧草地まで売買や貸し借りの対象となる時代。そんな変化もしっかり紹介されています。

21/8/15(日)

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