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クラシック、歌舞伎、乱歩&横溝、そしてアイドルの著書多数

中川 右介

1960年生まれ、作家、編集者

るろうに剣心 最終章 The Beginning

「最終章の二作目」(通算5作目)というややっこしさが、興行面で損をするかもしれない。 タイトルが示すように長い物語の「前日譚」にあたる部分だが、独立した時代劇映画として十分に成立している。で、いままでこのシリーズを観てこなかった人でも何も心配はいらない。むしろ、何も知らないで観た人のほうが、物語にストレートに入れるかもしれないくらいだ。 先に公開された「The Final」は、この「The Beginning」のネタバレをしているので、「The Final」を未見なら、先に「The Beginning」を観るのをお勧めする。 シリーズを観続けた人にとっては、主人公の剣心がなぜ虚無的になったのかという背景というか核心が明らかにされる意味でも見逃せない。 従来の日本の時代劇映画のスケールを超えた、大きなアクションシーンが売り物で、これまでの4作は大規模なセットや集団による大殺陣シーンが観るものを圧倒した。本作はそういう拡大志向から一転して、人物の内面を掘り下げた作品となっている。 もちろん本作ものっけからすさまじい殺陣があるが、映画の中心となるのは深く哀しい人間ドラマだ。佐藤健はひりひりするような虚無的青年をナチュラルに演じ、ヒロインの有村架純は笑顔を封印して抑制した冷ややかな熱演。登場シーンは少ないが桂小五郎役の高橋一生がもうけ役。 虚無的ヒーローといえば『大菩薩峠』の机竜之助や眠狂四郎。佐藤健で観たいものだ。 絶叫・号泣なしでも悲劇は描ける。

21/5/20(木)

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