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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

象は静かに座っている

234分という4時間近い映画を観る勇気。そして行くと決めたからには面白いだろうと勝手に偏差値を上げてしまうのだけど、そこをいとも簡単に飛び越え、今も脳裏にべっとりと張りついているのがこの中国映画であります。 ではなぜ、観に行ったのか? まずこの監督がベルリン映画祭で国際批評家連盟賞、最優秀新人監督賞を受賞し、さまざまな映画賞で未来を期待されているのにもかかわらず、映画完成直後に、自ら29歳で命を絶ってしまったこともあるのです。 デビュー作が遺作となった天才監督の撮った映画って……。 作家でもあるフー・ボー監督は、自身の著書の中からお気に入りの短編を長編映画として作り上げたわけだけれど、映画が始まって早々、心がもみくちゃにされる出来事が起こります。 それはあたかもフー・ボーの未来を予見するかのようなシーンであり、彼自身の心の中を覗き見する感覚で、試写室のシートからするりと物語に入り込んでいきました。その魔力は、もちろん彼が書いた脚本力でもあり、彼がこだわったであろうカメラアングルだったり、そこにいるかのような手持ちカメラの長回しだったり。とにかくすべてが生っぽくて、ミステリアスで、この不思議な体験のおかげで、時間を忘れて映画を体験できるのです。 登場人物は多く、本で読んだら間違いなくページを戻って確認しているであろう、それぞれの行動を縦横無尽に動かしながら編集した時間の流れ。 そのお陰で、主要人物4人が一体何者なのか? どんな境遇なのか? 何に困っているのかが、少しずつ明らかになっていき、とにかく登場人物全員に惹きつけられるのです! 何て贅沢な映画体験なのだろう。しかも社会の不条理や、掛け違いで起こる不幸の連鎖を一気に見せつけてくる画の強さ。一歩間違えると、自分たちにも起こり得る出来事であり、日常に潜む落とし穴なのかもしれない。 残酷なのにどこか美しく思えるのは何故なのか? これはあなたの目で確かめてほしい。この才能が世界から消えてしまったことが残念でならないのです。

19/10/31(木)

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