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水先案内人のおすすめ

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邦画も洋画もミーハーに、心理を探る作品が好み

伊藤 さとり

俳優や監督との対談番組を多数、映画パーソナリティ

春江水暖~しゅんこうすいだん

遠くから人を見つめ、やがて周囲へと視線は移動し、次の登場人物を見つけるロングテイクはまさに絵巻物。劇中、先生が中国水墨画である山水絵巻の話をするのだけど、まさにその実写を観ているようで動く芸術を堪能する映画体験であります! 浮遊するカメラはグー・シャオガン監督が影響を受けた岩井俊二監督作品を彷彿させつつ、劇中の大家族が何かと祈る菩薩が人々を見守る視線にも感じるし。しかも画の素晴らしさだけじゃない。 中国で長く続いた一人っ子政策の時に生まれた子供を持つ両親たちが、せめて子供には自分たちとは違い、良い暮らしをして欲しいと願い、金銭的に無理をしたり、子供の気持ちを汲み取れなかったり。それが娘ならばなおさら、良い暮らしをして欲しいと相手の給料を父親がリサーチするシーンがあったりと、日本では新鮮な描写もあり。 ダウン症の息子を男手ひとつで育てる三男が何故、あんなにもお金が必要なのか、兄弟たちは何故、縁を切らないのかも物語が進むにつれ見えてくる。大家族を大河に見立て、再開発で変化する暮らしの中で、さまざまな出来事があっても、人生は河のように止まらずに流れていくと伝える大傑作なのでした。お陰でまだ余韻に浸っているわたし。

21/2/8(月)

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