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巨匠から新鋭まで、アジア映画のうねり

紀平 重成

1948年生まれ コラムニスト(元毎日新聞記者)

春江水暖~しゅんこうすいだん

すごい映画の作り手登場です。激動の中国に生きる大家族の物語が一巻の山水絵巻物を眺めているかのようにも感じるスケールの大きさです。一昨年のカンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選ばれましたが、これが1988年生まれのグー・シャオガン監督による初長編作品ということにまた驚かされます。新しい才能が続々と登場する中国ですが、グー監督の場合は映画作りの才覚に加え、興味のあることに素直に向き合い、適度な忍耐心も併せ持つバランスの良さもプラスに働いているのでしょう。 映画が始まって20分ほどたち長男の娘グーシーが恋人のジャン先生と富春江でデートする場面。いきなり先生が泳ぎ出すのをカメラは横移動でゆっくりと追いますが、連続10分にわたるノーカットのパノラマ映像はまるで山水画を見ているように滑らかで無限の広さを感じさせます。 舞台となった富陽という町(杭州)の変化を通奏低音のように紡ぎ出し、さらに老人問題や家族観まで意識した作風はホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーの系譜と呼んでもおかしくはなさそうです。富陽は呑兵衛に人気の紹興にも近そうなのでいつか必ず……。

21/2/9(火)

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