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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢

フランス南東部ドローム県の小村オートリーヴには、寡黙な郵便配達夫シュヴァルが仕事の傍ら33年間に渡ってひたすら築き上げた和洋折衷の不思議な宮殿がある。建築の知識も美術史的見識も持たないシュヴァル。村人たちに変人扱いされながらも、拾ってきた石を積み上げ、黙々と彼だけが思い描く宮殿を構築し続けた。それは愛する娘のため。 ただの無口というより、コミュニケーション障害を抱えていたのではないかと思わせる人物造形、そして人との関わりよりも自然との交感に喜びを見出す感受性は、どこかシュナーベル監督「永遠の門」に描き出されたゴッホに通じるものがあるように思う。 33年かけて築き上げた理想宮は東西26m、高さ10mに及ぶ。そのスケールと稠密な細部造形にはピカソやアンドレ・ブルトンも圧倒されたという。彼の生前から宮殿に関心を持つ人が増え、完成前であった1905年の夏(シュヴァルは69歳)には1日平均50人もの見物人が訪れるように。宮殿の完成はそれから7年後。だが同年、結核により息子シリル死去。娘アリスに続いて息子にも先立たれる。この不運を彼はどのように耐えたのか……。彼を支え続けた2番目の妻と孫娘アリスの思いが切々と伝わってくるラスト。創造とは何かという問いとともに、秘めやかなある家族の物語として見て欲しい。

19/12/21(土)

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