田辺聖子の1984年の短編小説は、2003年に犬童一心監督、池脇千鶴主演で映画化された。それがアニメ化されたのが本作。1984年、2003年、2020年とおおむね20年おきに作品化され、それぞれが時代背景と重ね合わさったそれぞれの時代の傑作となっているのが非常に趣深い。1984年はプレバブル時代の豊かで終わりなき日常の中で、淡々とただ続いていく日々を描いた。2003年は「失われた平成」のさなかに、分断されていく私たちを描き、その分断の救いのなさの哀しみを痛切に描いた。そして2020年の本作は、分断されながらもその分断を乗り越え、希望を求めたいという焦がれるような気持ちをストレートに描き、いまこの時代だからこそ共感される感性が全編を覆っている。

20/12/21(月)