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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代

『クリムト ウィーンと日本 1900年展』(東京都美術館、7月10日まで)に合わせて公開される、世紀末ウィーンを華麗に彩る芸術文化を追ったドキュメンタリー映画。ウィーンは18世紀からつとに音楽の都として知られていたが、19世紀後半に皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の命により整備された環状道路添いに新たに建設された大学や劇場、市庁舎などの建築内部を装飾する絵画や彫刻が盛んに制作されるようになった。 こうした造形芸術の興隆から、保守的な美術界に抵抗する若い世代の芸術家たちが登場する。イギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けた彼らは分離派というグループを結成。そして一部のメンバーたちは絵画や彫刻に留まらず、直線を基調とするシンプルでモダンな家具やコルセットで体を締め付けない衣服等々、芸術と生活を統合するデザインを提案していく。その一方で、クリムトやシーレ、ココシュカらは、エロスと死の交錯する赤裸々な人間の姿を描き出した。映画を見て「ああ、そうだった。世紀末ウィーンはジークムント・フロイトを生んだ街でもあったのだ」と改めて納得。彼らの絵画に潜む欲望や夢や痛み。それはフロイトが開拓した深層心理に潜む欲望の蠢きを、絵画という視覚言語に置き換えたものと言えるのではないか……。 だが第一次大戦の終了とともに、中世からヨーロッパの覇権を握ってきたハプスブルク家の歴史は終焉を迎える。ウィーンという都市を支えてきたハプスブルク家の落日の煌めきと軌を一にする華麗なる世紀末芸術。『ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道』展(国立新美術館、〜8月5日)も含めてヨーロッパの歴史に思いを馳せてみたい。

19/6/4(火)

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