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水先案内人のおすすめ

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時代劇研究家ですが趣味は洋画観賞。見知らぬ世界に惹かれます。

春日 太一

映画史・時代劇研究家

プロミシング・ヤング・ウーマン

女性に対して性的なアプローチを自ら積極的に仕掛けることに関して、気づいたら若い頃からずっと苦手だった。それだけに、「どんな手を使ってでも性的関係に持ち込もうとする男性」は理解できないできたし、今でも嫌悪感すら抱いている。 だからこそ、本作の主人公・キャシーの行動には心から喝采したくなった。 キャシーは夜な夜な歓楽街に出かけては酔ったふりをして男をひっかける。そして、油断して近づいてきた男たちに鉄槌を下す。 酔った女性には何をしても構わない、あるいはあえて女性を酔っ払わせて慰み者にする……そんな男たちの醜い傲慢を打ち砕いていく様には、ある種の痛快さがあった。 が、そうしている彼女にはいつもどこか暗い影が覆っている。実は、そうした行動に出るだけのツラい過去が、学生時代にあったのだ。ある再会を機に、彼女はその過去と対峙し、理不尽な目に遭わせた者たちへの復讐を開始する。 絶望的なまでの怒りと哀しみを湛えながらのキャシーの闘いは、スリリングでありながらも重苦しい。それは彼女があえて背負った十字架の重みが、こちらにも生々しく伝わってくるから。 人生全てを賭したその壮絶な復讐劇に心の底からえぐられた。

21/7/17(土)

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