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水先案内人のおすすめ

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生きのいい日本映画を中心に、大人向け外国映画も

平辻 哲也

1968年生まれ 映画ジャーナリスト

メランコリック

都内の仕事場から徒歩5分に銭湯があって、月に何度か通っている。なんせ仕事場には風呂がない。普段は24時間営業のスポーツジムのシャワーで済ますのだが、やはり湯船に浸かると、疲れがドバーッと抜けていく感じがする。都内では数が減りつつある銭湯だが、都会のオアシスだ。 そんな癒やしの場所である銭湯を、殺し屋が仕事場にしていたという、なんともブラックなお話。昨年、第31回東京国際映画祭「日本映画スプラッシュ」部門で監督賞を受賞し、話題になった。製作費は昨年、映画界を席巻した『カメラを止めるな!』とほぼ同額の300万円とか。 田中征爾監督、主演、プロデューサーの皆川暢二、出演の磯崎義知という同い年3人組が立ち上げたユニット「One Goose」が製作。俳優の皆川は「仕事を待つだけの生活はイヤだ」と金を集めて、IT系企業で映像関係の仕事をしていた田中監督に映画の話を持ちかけた。映画会社はもちろん、ワークショップ、芸能プロダクションも関与していない純度100%の自主映画だ。 主人公は東京大学卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた和彦(皆川)。ふとしたことから銭湯でアルバイトをすることになるが、閉店後の深夜に、風呂場を「人を殺す場所」として貸し出していることを知る……。銭湯で殺しをすれば、その後始末もカンタンというわけだ。このアイデアが秀逸で、グイグイ引き込まれる。ちなみに、舞台となったのは千葉県浦安市にある「松の湯」。『ケンとカズ』でも使われた映画に理解のある銭湯。一度は浸かりに行きたい。

19/7/31(水)

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